過去編 第四話:「しょうがないんだ。」


「うぅ・・・・」
シオンはうめきながら目を覚ました。
ここは彼が与えられた部屋、アレクとの戦いの後は記憶にないが
ここにいるということはどうやら眠っていた様だ。
記憶にあるのは日が落ちた後で今は大分明るい一体何時間寝てしまったのか。
シオンは上半身を起こそうとした布団の重さに違和感を感じた。
抑えられている感覚にゆっくり上半身を起こす。
そこには女の子が横のイスに座りながら自分の腕で枕作り寝ていた。
シオンはその女の子の頭を優しくなでた。
「心配を・・・かけてしまったようだな」
女の子の名前はクレアと言った。
彼女は王に騎士として認められたシオンに付いた従者である。
戦争で両親を失い城内の雑用として働いていたが
ある日王に呼ばれシオンの専任として身の回りを世話する様に言われた。
もちろん素性がハッキリしないシオンに情を移させ人質として活用する為、
城での働き手で一番幼い彼女を付けたのである。
彼女はそんな事を知らずに朝から晩まで埃だらけになってよく働いた。
毎日よく動く彼女に最初は無関心だったシオンも献身的な態度に
そしてクレアは城の男たちとは違うシオンにお互いに心を開いていった。
結果的に王の思惑通りとなってしまった。
「んー」
クレアは軽い声をあげ起きたシオンをみて一瞬動きを止めると飛び起きた。
「シオン様!目が醒めたんですね。よかった〜・・・・」
相変わらず顔がうっすら汚れている。
「心配かけたようだな。すまない」
シオンが言うとクレアは目に大粒の涙をポロポロ流した。
クレアの涙をみてシオンは「えぇ」と、今まであげたことない声を出した。
「ほんとですよぅ・・・このまま起きなかったらって・・・」
クレアはポロポロ涙を流し声を押し殺して泣いた。
「いやいやいや・・あ、そ、いや・・・」
自分の事でこの少女は泣いている。初めての経験にシオンは戸惑っていた。
「もっと身体を大事にしてください〜」
泣きながらクレアはつげ、シオンは一息ついてつげた
「泣かないで。俺は死なないよ約束する。」
「ほんとうですか?」
「タマに倒れる事があるかもしれないけど病気じゃないんだ」
「え?」
「今回のは覚醒発作といって疲れちゃうと出るんだ。でも大丈夫、死んだりはしないよ」
「それはそれで心配じゃないですか〜〜」
またポロポロ泣き出した
「大丈夫だから。だから今回のも次に倒れても心配しないで」
「なんでそんな・・・」
「いいかい?覚醒発作のことも秘密だけど今から言う事も秘密だよ」
クレアは首を立てに勢いよく振った。
「耳を貸して・・・」
シオンはクレアに耳打ちをしクレアはビックリしたような顔をした。
「君は信じてくれるかい?」
シオンはそう聞いた。
「信じます。たとえ嘘でも。」
「ありがとう。この事は俺と君だけの秘密だよ」
「はい・・・えっと・・・どっちで呼べば良いですか?」
「シオンだろ。」
「シオン様の発作はじゃぁ本当に大丈夫なんですね。」
真面目な顔でクレアはシオンに聞く
「言ったろ。原因も治癒方法もわかってるんだ。心配ない」
クレアは胸をなでおろしもう一つ質問をした。
「それで・・・もし・・・目的を果したらシオン様はどうするんですか?」
「・・・ここにはいられないかもしれない」
クレアは泣きそうな顔をした。
「その時はついてきてくれる?」
クレアは一気に明るい表情を見せた
「もちろん!あの・・・その・・ずっと!」
クレアは顔を真っ赤にしてこたえた。
沈黙が少し続いた後クレアが急に思い出してシオンに言った。
「そうですよ!シオン様が目覚めたら王様の所に行くように指示されていました」
シオンは立ちあがる。
「そうか・・・ではいかないとな・・・」
「大丈夫なんですか?明日とかでも・・・」
「いや俺も王に用事がある。ちょうど良い」
「じゃぁ服を取ってきますね」
そういうとパタパタ音を立てながらクレアはクローゼットにいった
クレアはいつも急ぎ足だ。
「さて・・・他のオーガニクスが動きだす前にどうにかしようと思ったが
 ちょっと状況が変わってきな・・・次の手を・・・」
クレアは服をもってパタパタ戻ってきたがつまずいて転び服が宙を待った。
「クレア!」
シオンが急いでクレア近きクレアを抱き上げた。
「大丈夫か?怪我はないか?」
「はい・・・ごめんなさい」
クレアはいつものクセで謝った。
「?誤る必要はないだろう。故意にやったわけでもない。でも怪我はしないように」
「・・・はい」
クレアはシオンの服の胸元を握った。
今まで雑用として軽く扱われてきたがシオンの従者になってから
殴られて怪我をすることも無く、今まで経験したことない暖かさを感じる。
親を失い孤独な彼女にはシオンだけが安住の場所だった。

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