過去編 第二話:「戦うしか・・・ないじゃないか。」



「・・・これでよかったのか?」
リラーンの戦場一帯を吹き飛ばした巨人、
<オーガニクス>はそう呟いた。

彼はシオンと呼ばれていた。彼にはこの世界での過去はない、
この世界で気がついた時には、彼はアーベンドの一室にいた。
何も無い灰色の部屋にベットだけがあり、その上に自分がいた。
見た事もない環境を見渡し、呆然としていた。
そこに煌びやかな服をまとった男が現れた。
「目覚めた様だな。明日に王への謁見がある。わかるな?」
男は彼にそう告げたが、唐突すぎるその言葉は到底理解できなかった。
「・・・なにいってるんだ?というかここは何処だ?」
彼は男に問いかける。
「驚いたな。何もわからないというわけか?ということは俺の顔も知らんのか?」
「・・・しらないな。悪いがこの状況自体が把握できていない。
状況を教えてくれないか?」
「記憶喪失か?この辺は戦争が多いからな。無理も無い。
ショック状態の様だな。」
彼は答えるわけでもなく耳を傾ける。
「私の名前はゲイン。この国で将軍をしている。」
そう言うとゲインは国の説明を始めた。
この国アーベンドが軍事国家である事、
始まりは集落の戦闘民族から発生しており
国の利益は階級によって平等に配布される。
つまり国民は国が存続している限りの安定が約束されている事になる。
また、この国は新しい仲間を快く迎えるが裏切りはけして許さない。
つまり一度足を踏み入れたら二度とこの国を離れる事はできなくなるのだ。
その為に、この国を訪れた者は謁見という儀式をする。
この国に訪れた者は必ず王に謁見して忠誠を誓い、
一生の居住権と引き換えに王への忠誠と永住を誓う。
従わなければ人生はそこで終わるのだ。
続けてゲインは彼の事を話し始める。
彼が雨の日に土にまみれて倒れていたと、
2日間眠っていた事も告げられた。
そしてゲインは彼に質問した。
「お前は4体の巨人の事も覚えていないのか?」
質問された彼は顔色が変わり、
ふらつく身体をおこしてゲインにしがみつきながら言う。
「頼む。そこにつれていってくれ」
「もう少し休んでからに・・」
「今だ!・・・すまない。だが頼む。」
「・・・良かろう」
ゲインは彼を兵器庫へ連れて行き、
横たわる4体の銀のマントのような物に包まれたオーガニクスを見せた。
どうやら彼と共に地中から土から出てきたものらしい。
彼は青ざめ、ゲインの背から降りると、何かに気づいた様に一つのオーガニクスへ向かった。
「おい!無茶をするな!」
ゲインは叫んだが彼は止まらない。
彼が足元へ近づいた時、
今までピクリとも動きもしなかったそのオーガニクスは、胸元へ彼を導く。
オーガニクスは胸元を展開し彼はそのまま中へ入り融合した。
白いオーガニクスが徐々に灰色になる。
「・・・オーガニクス・・・この肉体が変わる感覚を俺は受け入れる事ができる」
彼、いやオーガニクスは起き上がり辺りを見渡した。

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