現在編 第六話:「アイムソーリー」


「・・・またか・・・」
賢悟はベットで目を覚ます。部屋を見渡す。
「・・・・・・」
部屋の隅でソバニコフが椅子に座りこちらを見ているが暗闇で姿は見えない。
賢悟は繁華街でのことを思い出す。
「・・・お前が運んできてくれたのか」
ソバニコフはの影が頷く。
「モハメッドはどうした?」
ソバニコフは頭を振った。
「・・・そうか。まぁいい、別に仲間でもない。」
そう言って賢悟はテレビをつける。
――日本で謎の巨人が暴れ都市を壊滅的な状況にしておりますが――
――奇跡的に死者、行方不明者は出ていない様です。――
――我々アメリカとしても対応を考えなければなりません――
「・・・・・・」
ソバニコフは黙ってその映像を見ていた。
「結果的に我々の負けか。・・・ソバニコフ」
「・・・・・・」
ソバニコフは賢悟の方を向いた。
「お前は夢の中で俺のオーガニクスがお前のオーガニクスと共に戦っていたから
ついてくると言うことだったな。」
賢悟の問いにソバニコフは頷く。
「確かに俺が見た夢にもお前のオーガニクスは出てきた。だから俺はお前を誘った。」
「・・・・・・」
ソバニコフは怪訝そうな顔をする。
「モハメッドか?アイツは俺に取引持ち出したんだ。まずは共闘して最後に生き残った方がすべてを握ると」
「・・・・・・」
ソバニコフは軽く頷く
「俺の話をしよう・・・俺は昔施設で育った。別に同情を引くつもりは無い。
実際、施設は今考えてみれば悪い所じゃなかったし、
親の記憶が無い俺にとって集団で暮らす事は普通だった。
だが俺は良く解らない研究所に移された。そこでは色々学んだよ。
培養学、生物学、天文学、心理学、機械学、情報学・・・。
周りは外人だらけだったが研究は楽しかった。語学もそこで大体覚えた。
言われた事をやってるだけで俺は生活もできるし、金も手に入れた。」
「・・・・・・」
ソバニコフは黙って聞いてる。
「そこで自分の事も調べた。俺は天才児だったらしい。
知能テストでありえない数字をたたき出した。・・・売られたのさ俺は」
ソバニコフは頷く。
「別に売られたことに恨みがあるわけじゃない。
予想していた事だしな。問題はそこではない。
俺が作り研究したものがすべて兵器として使われていた事だ。」
「・・・・・・」
「別に安い正義感に駆られた訳じゃない。ただ俺が言われるがままに作った物が
兵器で何人もの命を奪っていた。そこに俺の意志は入ってない。俺が作ったのにだ。
だけどそいつらを殺したのは俺なんだ。」
「・・・・・・」
「笑った。初めて心のそこから笑ったよ。この世界は滑稽だ。
俺は知らない間に大量殺人者で俺に殺す意志は無いのに皆俺の兵器で死んでいる」
「・・・・・・」
「何かを生み出すわけでもない。ただ俺は生活の為に何人もの命を奪う。
俺を生かすために何人も死んでる。最高のコメディーだ。
そんな時、軍からある物の調査を頼まれた。そう。巨人だ」
「・・・・・・」
ソバニコフは目を見張る。
「最初に月で拾ったと聞いた時は<何の冗談だ?>と思ったものだったが
実物を見たときに信じざるを得なかった。最高に興味深い物だったよ巨人達は。
その有機的な構造、精神感応する装備と機体。全てが謎だ。
俺はオーガニクスと名付け一心不乱に調べたよ。
・・・その時協力してくれたのが軍から派遣されてきたライ=メイ、
拳のオーガニクスを扱っていた男だ。」
「・・・・・・」
ソバニコフは軽く頷いた。
「彼は俺を道具としてではなく人として接した。彼は頭が良かったからな良い経験になった。」
「・・・・・・」
「充実していた・・・が俺に転機が訪れた。俺はオーガニクスの調査中に胸部へとりこまれた。」
「・・・・・・」
ソバニコフは目を見開く。
「ソバニコフは解っていると思うが、存在はすぐ理解できた。
軽く力を入れるだけで研究所が壊れていく。その力に俺は考えた。
俺の意志でこの狂った世界を壊す事を。再生させる事を」
「・・・・・・」
「そしてオーガニクスの力があればそれは可能だと。」
賢悟の言葉に力がこもる。
それをただ黙ってソバニコフは見つめていた。

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