過去編 第三話:「なんで僕が!」


リラーンで二体のオーガニクスが目を合わせる少し前、
湖のほとりに巨人と寝かされている少女がいた。
巨人は心配そうに、その少女の顔を覗きこむ。
「うぅ〜ん」
その少女であるセリアは、うめき声をあげて目を覚ました。
ゆっくり目をあけると、目の前に巨人がセリアの顔のすぐ近くにあった。
「うわ!」
セリアはビックリして飛び起きたが、すべてを思いだした。
この巨人は幼馴染の男の子だと。
「だ・・・大丈夫!?」
巨人はアレクの声でセリアに話かけた。
「うん・・・どうにか・・・アレクがココにつれて来てくれたんだよね」
セリアは辺りを見まわして、
自分たちが良く知っている湖の風景だと理解した。
「セリアが急に倒れたから、いつも来てた湖につれてきたんだ。」
「そう・・私、長い間倒れてた?」
「いや、運んで来たらすぐ目が醒めたから。」
「迷惑かけてゴメンネ」
「な・・何を言ってるんだよ。」
アレクは続ける。
「大丈夫?」
「うん・・ところで・・巨人から降りれないの?」
やはり話をするなら、いつものアレクと話をしたい。
そう思うのは当たり前だ。
「降りれるけど・・・まだ降りちゃいけないんだ」
「え?なんで?」
「・・・解らないけど感じるんだ。」
「どういうこと?」
「なんていうのかな。呼ばれている事がわかるんだ。」
「何を言ってるの?」
「僕にもわからないけど、まずはリラーンに帰らなきゃならない。」
「・・・・」
「だから巨人から降りたいけど、今はまだ降りれない。」
「わたしには良く解らないけど、戻らなきゃいけないと思うのね?」
「うん。上手く言えないけど、会わなきゃいけない人がいるのを感じるんだ」
「わかった。じゃぁ戻ろう。」
セリアは、今から行こうとしている出身国が戦場になっている事は予想していた。
しかし、身内とも言えるアレクの決意が揺るがない以上はしょうがないと考えていた。
「・・・ゴメン。僕は一人で行くよ。セリアは待っていて。」
アレクは申し訳なさそうにそう言った。
「なんで?私は一緒につれてってくれないの?」
「危険だよ。」
「そんなのは知ってるよ。一人は嫌なの!」
すべて決心した上で、セリアは叫んでいた。
「ありがとう。でもつれてはいけない。必ず迎えにくる。だから・・・まってて」
アレクの言葉は重い。
セリアは意思を感じて、アレクの言う事を聞こうと思った。
「・・・必ず迎えに来てくれる?」
「必ず。約束する。ヤバそうだったら帰ってくるよ。一人にはしない」
「約束だよ」
「うん」
跪いていた巨人は立ちあがった。
「行ってきます・・・!」
アレクは空高くマントを翻し飛び立った。

Next


inserted by FC2 system